『マッドマックス:フュリオサ』公開記念/『マッドマックス』1作目の素晴らしさ3選

『マッドマックス』ファンのみならず、映画ファン待望のシリーズ最新作『マッドマックス:フュリオサ』が公開された。

『マッドマックス:フュリオサ』公式サイトはこちら

これを機に、シリーズの過去作を振り返ってみたい。                             今回は記念すべき1作目にして、「映画とバイク」をテーマに掲げる当ブログとも親和性の高い『マッドマックス』を取り上げようと思う。

『マッドマックス』1作目は1979年の作品だ。                                後のシリーズとは異なる魅力を持った、素晴らしい近未来カーアクション映画である。

監督はもちろんシリーズ全作を手がけるジョージ・ミラーさん。                        当時34歳での処女作だ。

 私が初めて観たのは、恐らく1982年4月14日の『水曜ロードショー』でテレビで放送された時だったと思うが、以来、この作品の虜になっている。

*以下ネタバレありになるので、ご注意ください

目次

その1.役者の魅力

主人公マックス・ロカタンスキーを演じる若き日のメル・ギブソンさんの魅力がハンパない。           途中までは、2作目以降では失われた笑顔を見せ、ふざけておどける微笑ましい姿も見せてくれる。                   それが後半一転。                                             極悪バイカー集団トーカッター一味を追い詰める狂気の演技との対比になっていて、素晴らしい。

私はスティーブ・ビスレーさん演じるジム・グースというキャラクターが大好きだ。                          登場シーンは少ないが、何もかもカッコいいのだ。                              レストランで食事中に本部から無線連絡が入って外に駆け出し、表に止めてあったクルマのボンネットの上を転がってバイクに跨ると、ホイールスピンさせながら走り出す!                             この一連の動作は何度観てもシビレる。

グースのステッカー(筆者所有)

グースのような、マックスが信頼を寄せる良き相棒というキャラクターは後の作品には登場していない。    

これは本作が後のシリーズとは異なる、際立った特徴である(『〜2』のジャイロキャプテンはコメディリリーフだし、『〜怒りのデスロード』のフュリオサは共闘しながら信頼を深めていく関係なので、相棒とは異なるといえるだろう)。

極悪バイカー集団のリーダー、トーカッターはヒュー・キース・バーンさんが演じている(余談だが、バイク乗り界隈ではトゥーカッターと発音されることが多いようだが、どっちが正しいんだろう)。                 その演技はまるで「悪」という概念そのものがバイクに乗ってやってくるようで、最高で最悪だ。         後に『〜怒りのデスロード』で悪のカリスマ・イモータン・ジョーを演じられたことでも有名だが、残念ながら2020年にお亡くなりになられた。 

ジョフ・パリーさん演じるトーカッターの側近、ババ・ザネッティのクールさも忘れられない。

その2.バイクとクルマの魅力

本作には大量のバイクが登場する。                                     グースの愛車のMFP(メイン・フォース・パトロール)のバイクや、トーカッター一味のバイクがそうだが、そのほとんどがカワサキのZ1000だ(日本の中古車市場では、北米仕様であるKZ1000が多く出回っているようだ)。     

この辺りはバイク好きにはたまらない魅力で、Z1000(KZ1000)や、同じくカワサキのゼファーをグース仕様にカスタムして集まるミーティングが現在でも行われている。

余談になるが、グースの愛車のタンクには「 KWAKA 」という、ちょっとどう読んだらいいのか不明な謎のステッカーが貼られている。                                             今回調べたところオーストラリアのバイカーの間で、カワサキ車のことをこういう愛称で呼んでいるという情報もあった。どう読むのかは不明だが。

トーカッターのバイクは、グースの愛車と同じくZ1000をフルカウル仕様にカスタムした物で、色が違うだけでほぼ同じ車両だ(カウルの幅等、若干違うという情報もある)。                            トーカッター一味のZ1000もどれもカッコいい。                                ホンダのCBも混じっていたと思う。

そしてマックスというキャラクターを象徴するクルマ、黒のV8インターセプターである。             ベース車はフォードの1973年式ファルコンXB GT。                              後半、トーカッター一味をどんどん追い詰めていく様は、異様な緊張感があってスリリングだ。 

こちらも熱心なファンの方々が再現したレプリカが、YouTube上で多数確認できる。

マックスのグローブのレプリカ(筆者所有)

その3.恐怖演出とドラマの魅力

今作を初めて観た時に感じたのは、アクション映画というよりホラー映画のような、とにかく恐ろしい映画という印象だった。                                                 作品の触れ込みも撮影中に死者が出たとか、そういう怖いものだった。

全編を通して不穏さを煽る音楽はブライアン・メイさん(クイーンのギタリストとは同姓同名の別人)。

特に恐ろしいのが、グースがトーカッタ一味にクルマごと焼き殺されるエピソードだ。                  病院に駆けつけたマックスは変わり果てたグースを見るのだが、画面には焼けただれた手だけが一瞬だけ映される。 

観客はそれを見たマックスの表情から、グースがどんな惨たらしい姿になってしまったかを想像するのだが……

これがトラウマ級の恐ろしさなのだ

1作目が優れてるところは、残虐シーンを直接見せず、だがとんでもない暴力が行われたと、観客に想像させる演出が多用されている点だ。                                           

今作はほとんど自主制作映画に近いような低予算で撮られたようだが、目の超クローズアップを用いた恐怖演出など、予算をかけられないことを逆手にとったアイデアが素晴らしい。                                                

近未来的なセットを組めなかったがゆえ、結果的に現実との地続き感がまだ残っているのも良い。          2作目以降は予算が増え、最終戦争後の世界を描くため車両や衣装が現実的なものではなくなり、それが後の数々のSF映画や漫画『北斗の拳』に多大なる影響を与えることになる。

が、個人的にはこの1作目の世界観が好きだ

相棒のグースが惨殺され警察を辞めようとしたマックスは、上司からとりあえず休暇を取るように言われ、家族とともにキャンピングカーで旅に出た。                                      しかし運悪く、旅先で妻子がトーカッター一味に偶然遭遇して殺害されてしまうのだ(奥さんの息はまだあるようだが、おそらく亡くなったんだろう)。

この後は、ほとんどセリフのない復讐劇が展開していく。                           それは狂気と狂気の対決だ。

本作がシリーズ中でも異彩を放っているのは、唯一マックスに能動的な行動の動機があるからだ。                    マックスの葛藤は観客に痛いほど伝わる。                                  なので彼が狂気に走る変化も自然に受け入れられる。

クライマックスでグースの仇であるジョニー・ザ・ボーイを見つけたマックスは、転倒してガソリンが流出しているクルマに、ジョニーの足を超高度スチールの手錠で繋ぎ、着火したライターを仕込む。                           そして引火で爆死したくないなら自分で足を切断しろと、糸ノコギリを渡して立ち去るのだ。

ジョニーはトーカッターに強要され、結果的にグースを焼死させたことを観客は知っている。           一方でマックスの絶望と怒りも、十分過ぎるくらい観てきた。                                   

なのでこの結末は、とんでもなく後味が悪い。

暴力は暴力を生み出し、果てしなく連鎖する……この事実をエンタメとして端的に描ききった本作。

全人類必見でしょう!

まとめ

以上の3選から、本作が歴史的なSFアクション映画であるばかりでなく、ドラマ作品としても非常に優れていると筆者は考える。                                                  それは公開から45年たった現在でも、熱心なファンがいる証左ではないだろうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました

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