映画『ボーはおそれている』感想:アリ・アスター監督の脳内オデッセイ8選!

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目次

ネタバレなし感想

1:概要とあらすじ

『ミッドサマー』アリ・アスター監督

『ジョーカー』ホアキン・フェニックス

最狂コンビから貴方の精神に挑戦状。

前代未聞の帰省の果ては祝福か、絶望か?

チラシより引用

公式ホームページ https://happinet-phantom.com/beau/

https://www.youtube.com/watch?v=N1vlJGAve2Y&t=2s

日常のささいなことでも不安になる怖がりの男ボーはある日、さっきまで電話で話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう”いつもの日常”ではなかった。これは現実か?それとも妄想、悪夢なのか?次々に奇妙で予想外の出来事が起こる里帰りの道のりは、いつしかボーと世界を徹底的にのみこむ壮大な物語へと変貌していく。

チラシより引用

さて、アリ・アスター監督とホアキン・フェニックスさんのタッグですよ!

アリ・アスター監督は『ヘレディタリー/継承』で映画ファンに衝撃を与えて、続く『ミッドサマー』でカルト的な人気を不動のものにしたお人です。

そしてホアキン・フェニックスさん!

2:ホアキン・フェニックスという才能

この人が出てるだけで映画の信用度は保証されたようなもんですよね。

あのリバー・フェニックスさんの弟さんということですが、独自の路線を進んでおられる素晴らしい役者さんだと思います。

最初に拝見したのは、たぶんリドリー・スコット監督の『グラディエイター』(2000)だと思うんですが、注目しはじめたのはM・ナイト・シャラマン監督の『サイン』(2002)でした。

メル・ギブソンさんの弟の役を演じられたんですが、独特な”間”を作られていて、面白い役者さんだなと思いました。

『サイン』のネタバレになるので伏せますが、クライマックスで二人がとるある行動は爆笑ものなので、未見の方はご鑑賞してみてください。

次に印象に残っているのはスパイク・ジョーンズ監督による2013年の『her/世界でひとつの彼女』ですね。

A.I.に恋する孤独な男を演じるホワキンさんは、細やかな表情の作り方まで完璧だったと思いました。

A.I.の声を演じられたのがスカーレット・ヨハンソンさんなんですが、実態を持たないA.I.が、生身の男とセックスを試みようとする展開は、後の『ブレードランナー2049』を先取りしていましたし、素晴らしい作品だったと思います。

そしてトッド・フィリップス監督による2019年の『ジョーカー』ですよ!

こちらでのホアキンさんは今作にも繋がる精神疾患のある役を、役者魂あふれる存在感で演じられて、古くから知られるコミックのキャラクターを、現代的に昇華させてみせたのが本当に素晴らしかったですね。

ただ本来サイコパスキラーであるジョーカーに、精神疾患という設定を加えてしまったのは、素直に

ジョーカーカッコいい!もっと世界をぶっ殺せ!

とキャーキャー言えなくなってしまったように思えて、そこが評価された面でもあるとは思うんですが。

難しいところです。

今年公開予定の続編はレディー・ガガさん演じるハーレイ・クインとのロマンスを、噂ではミュージカル的な演出を交えて映像化されるそうで、これはもう期待しかありません。

で、今作『ボーはおそれている』なんですが、そんなホアキンさんの集大成とも言える作品になったんじゃないかなと思いました。

ホアキンさんが演じる顔の表情、身体の動き、そしてその体型にいたるまで、最高の表現としか言いようがなかったです。

アリ・アスター監督とは相性が良かったのか、監督の次回作でも再タッグを組まれるようです、楽しみです。

3:異能の天才アリ・アスター

・オデッセイ・スリラー

本作の宣伝で『オデッセイ・スリラー』というコピーが使われてますが、秀逸だなと思いました。

オデッセイという言葉からはスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』の元題『2001: A Space Odysse』を連想させられるのですが、本作はアリ・アスター版の『2001年』というか。

まあ全然違う話なんですけど(笑)。

個人的にはですが……

誰でも脳内に自分版『2001年』を持っていると思っていて

アリ・アスター監督にとって今作がそうなのかと。

すみません、何の話だかわかりませんね(笑)。

・家族の呪い

アリ・アスター監督の前二作品にも言えることですが、今作ではより顕著に監督のテーマである「家族の呪い」が現れていたと思います。

インタビューによると

家族は万人に通じる最も身近な存在であり、それはつまり万人を不快にさせることができるテーマ

と語っておられて、観客を不愉快にさせるための映画を作っておられる監督にとって、「家族」とは切っても切れないテーマなんだろうと思います。

・今作はコメディ

ホラーだった長編前2作品とは違って、今作はブラックコメディなんですよね。

ただ気楽に観られるコメディではなく、アリ・アスター監督の脳内を見せつけられる179分の長旅になるので、要注意です

・ユダヤ人の『ロード・オブ・ザ・リング』

主人公ボー役は最初アフリカ系の役者さんの予定だったのが、白人のホアキンさんに変更になったそうです。

アリ・アスター監督はユダヤ系で、その変更から主人公をユダヤ系のキャラクターに設定し直したことで、。

「ユダヤ人の『ロード・オブ・ザ・リング』みたいなものなんだ」

と語っておられるように、本作はユダヤあるある満載になったそうです     

・アニメパート

印象的なアニメパートは、アリ・アスター監督が絶賛した『オオカミの家』の監督である​​クリストバル・レオンさんとホアキン・コシーニャさんが担当されているそうで、不穏なイメージと独特の色彩感覚が素晴らしかったです。    

『オオカミの家』は2023年で筆者一推しの作品でもありますので、機会があれば是非ご鑑賞ください。

               

ネタバレあり

4.全部妄想?

今作は全編にわたって現実と主人公の妄想が入り乱れていると思えて、解釈によってはすべて妄想とも捉えられる作りになってるんですよね。

話を要約すると……

精神疾患を持つ童貞中年男性が、支配的だった母親の葬式に参列するために帰郷する

というシンプルな物なんですが、主人公ボーに次々と起こる事件がどれもこれも濃厚に狂っていて、

とても現実のものとは思えないんです

なので、今作は観た人によっていろんな解釈ができる映画で、

筆者的には、ボーが大人になってからの現代のパートは、全て彼の妄想フィルターを通して表現された世界だと捉えました。

それに乗れるなら、とても面白い映画体験が出来るんじゃないでしょうか?

5.そしてボーは敗北した

実は母親は生きていて、結局ボーは母親の支配から逃れることができずに敗北する、ということになるんです。

これは、男性なら多少は母親に対して抱いたことのある感情だと思えるので、ぶっ飛んだ事件の連続の今作ですが、特に男性の観客は、主人公への感情移入がしやすいんじゃないでしょうか。

6.エレイン

少年時代に恋したエレインと結ばれるところは、普通のドラマだと都合良すぎる展開に感じます。

でも今作はボーの妄想かもしれないので、そこはどうでも良くて(笑)

そしてボーはようやく童貞を捨てることができます。

この映画を観ていて唯一幸せなシーン!

が、そう思った直後にエレインに腹上死されて、一瞬でマネキンみたいにガチガチに死後硬直されてしまうという。。。

しかも、実は生きていたお母さんに一部始終見られていた。。。

まさに悪夢

7.お父さん

実はお父さんも生きていて、屋根裏に監禁されていたりと盛りだくさんな展開が続くのですが、

お父さんがペニス型のモンスター!

だったのは、B級映画愛溢れる造形が嬉しいというか笑いどころだと思うので、やっぱり今作はコメディなんだと、観ていて冷静に戻れました。

8.最後の裁判

子供時代の母親へのイタズラを引き合いに出されて裁かれるボーは、本当に気の毒でした。

思春期の頃なら、誰だって母親に対してあれくらいの悪意は持ってたんじゃないんですかね?……

この辺り、どうなんでしょう?

みなさんはどう思われますか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

映画語りのYouTubeやってます。

そちらでも取り上げましたので、良ければご視聴ください。

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