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作品情報
『女王陛下のお気に入り』で映画賞を席巻したヨルゴス・ランティモス監督が、再びエマ・ストーンとの最強タッグを組んで贈るのは、想像を遥かに超えた麗しくかつあまりにも大胆な冒険物語。第80回ヴェネチア国際映画祭でかつてない大絶賛を受けて、栄えある最高賞である金獅子賞を受賞した。
(チラシより抜粋)
あらすじ
自ら命を絶った不幸な若き女性ベラは、天才外科医ゴッドウィンの手によって、奇跡的に蘇生する。ゴッドウィンの庇護のもと日に日に回復するベラだったが、「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られ、放蕩者の弁護士ダンカンの誘惑で、ヨーロッパ横断の旅に出る。急速に、貪欲に世界を吸収していくベラは、やがて時代の偏見から解き放たれ、自分の力で真の自由と平等を見つけていく。そんな中、ある報せを受け取ったベラは帰郷を決意するのだがーー。
(チラシより抜粋)
https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings
ネタバレなし感想
ということで観てまいりました。
今作はR18+です。18歳未満の方はご覧になれませんので、ご注意ください。
エマ・ストーンさんの体当たり演技が凄い!
彼女はプロデューサーにも名を連ねているのですが、彼女の動きや身体的な魅力に溢れてました。
世界観が凄い!
撮影、美術、衣装、そして音楽が独特で、いつの時代とも分からないスチームパンク的な世界観を見事に構築してました。
また魚眼レンズを多用した撮影も独特ですし、モノクロとカラーの使い分けも鮮烈でした。
これらに触れるだけでも、忘れられない映画体験になると思います。
ただし、お客さんを選ぶ映画でもありました
というのも、R18+ということもあって過激なセックスシーンが多いんです。
それもエロさよりも、滑稽さや下品さが表現されていましたね。
あと衝撃的な終わり方をするんですが、人によってはトラウマになるんじゃないかと思います
ネタバレあり感想
主人公の名前はベラということで、演じるエマ・ストーンの目がパッチリとしたルックスもあって、アニメ『妖怪人間ベム』の、女性型の妖怪人間ベラを思い浮かべる。
あちらは人間になりたい妖怪人間の物語でしたが、今作は自由になりたい女性人造人間の物語になってました。
つまり『フランケンシュタイン』の女性フェミニズム版というか。
そういったところが、去年何かと話題になった、『バービー』と似ていると評されてもいるようです。
https://wwws.warnerbros.co.jp/barbie/
冒頭、ベラが橋の上から川に投身自殺するシーンから始まりますが、この時点ではカメラアングルで伏せられてますが、彼女のお腹には赤ちゃんがいます。
その赤ちゃんを腹から取り出して、赤ちゃんの脳みそをお母さんの脳みそと入れ替える手術がウィレム・デフォーさん演じる天才外科医、ゴッドウィンによって行われるという流れになります。
ゴッドウィンの顔面は『フランケンシュタイン』の怪物それを彷彿とさせる物で、度肝を抜かれると同時に、ジャンル映画好きには特殊メイク感あふれる造形がカッコ良かったですね。
そんな彼はベラを研究対象としてではなく、父親としての愛情を注いで接するようになります。実は彼自身、外科医の父から拷問のような手術を受けてきたという過去が明かされるのですが、つまり
フランケンシュタイン博士の立場でありながら、人造人間の立場でもある
ということになります。
筆者は
『フランケンシュタインもの』というのは一つのジャンルになっている
と考えているのですが、人間によって造られた者による苦悩と叫びは、いくつもの名作を生み出してきたと思います。
個人的に好きなのは『ブレードランナー2049』と石ノ森章太郎先生による漫画版『人造人間キカイダー』なんですが、男性キャラが主人公の場合が多いのではないでしょうか。
女性人造人間としては『フランケンシュタインの花嫁』という『フランケンシュタイン』の続編となる映画もありましたが、怪物の花嫁として作られた女性人造人間は最後の方にしか出てこないし、そのリメイク作の『ブライド』という作品では、ジェニファー・ビールスさんが女性人造人間役で、スティングさんがフランケンシュタイン博士役だそうで面白そうなんですが、残念ながら未見なので機会があれば是非観たいところです。
有名どころでは『攻殻機動隊』シリーズの草薙素子もいますね。
今作のベラは母親に幼児の脳が移植されているので、性に目覚めた時にはすでに処女ではない大人の女性の肉体を持っているわけです。
それで子供らしい好奇心から早くも自慰行為を発見すると
幸せを見つけた!
と大喜びするんですよね。
そんな天真爛漫なベラに、ゴッドウィンの弟子であり彼女の記録係を務める、ラミー・ユセフさん演じるマックスは恋するようになりますが、ゴッドウィンの勧めで彼女と婚約します。
でも好奇心旺盛なベラはマーク・ラファロさん演じるプレイボーイの弁護士ダンカンにそそのかされて、二人で大陸横断の旅に出てしまいます。それを容認するゴッドウィンが父親らしくて微笑ましいです。
そしてベラは、ダンカンとセックス三昧な毎日を送るようになるんですが、セックスのことを
熱烈ジャンプ
なんて表現するところが可笑しい(笑)
そんな彼女にダンカンは本気で恋してしまい、束縛するようになるんですよね。
ところがベラは旅を通して頭脳が肉体に追いついていき、ダンカンを捨てて、娼婦として生計を立て始めます。
その娼館で友達になった黒人の娼婦とレズビアンの関係になりながら、彼女の影響で社会主義に目覚めたりします。
この辺りがフェミニズム映画なところですが、滑稽なセックスシーンや、落ちぶれていくダンカンと対比もあってユーモラスに進むので、説教臭さは感じさせないように演出されていたと思います。
やがてゴッドウィンが病に犯されたという手紙を受け取ったベラは、彼の元に戻ります。
そしてゴッドウィンが見守る中マックスと結婚式を挙げるわけですが、嫉妬に駆られたダンカンが連れてきた元の夫である、クリストファー・アボットさん演じるアルフィーという男に連れ去られてしまいます。
ベラの肉体は生前の母親ですからアルフィーにとっては妻ですが、ベラにとってアルフィーは父親に当たるという、
何ともややこしいことになるところが面白いです。
ところが軍人であるアルフィーは大変なDV男であることが分かり、ベラは屋敷に閉じ込められ、クリトリスを切除する手術をされそうになります。
そこで彼女はアルフィーに大怪我を負わせてマックスを呼ぶんですが、殺すと思いきやゴッドウィンの所に連れて行くんです。
最後は庭で優雅に読書するベラの姿で終わるんですが……
ここが個人的に引っかかったトラウマ部分なんですが、アルフィーを殺さずに、なんとヤギの脳を移植して庭で飼ってるんですよね。
四つん這いで草を食べながら「メ〜」って鳴いたりしてね。
これは悪趣味というか。。。
『フリークス』や『ザ・フライ2』の終わり方を思い出しました。
こういう見せしめ的な復讐の発想は、キリスト教圏独特のものなのか?
そもそもアルフィーの脳はどうしたのか。。。
まとめ
ブラックユーモアとしてスカッとしたという感想を持たれる方が大半だと思うんですが、個人的にはちょっと後味悪かったですね。
そういうこともあって、どちらかというとカルト映画の部類に入るような作品だと思うのですが、作り込まれた世界観とスター俳優さんたちの名演で、堂々たる大作の風格がある不思議な映画でした。
映画館で鑑賞できて良かったです。
それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
映画語りのYouTubeやってます。
そちらでも取り上げましたので、良ければご視聴ください。
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